ゴルファー保険について
日本ではゴルフをするに当たってホールインワン保険に代表されるようなゴルファー保険への加入が一般的ではありますが、オーストラリアでは同様の保険はそれほど普及していません。その理由は日本のようにホールインワンに伴うお祝い金の文化が一般的ではない事、合わせてキャディーさんのような客観的な証人がいない事が考えられますが、それでも以下のような補償を包括的にカバーする保険は購入可能です。
ゴルフ用品補償
ゴルフクラブなどの盗難、紛失、破損などをカバー
個人賠償責任補償
プレー中の行為によって第三者に怪我を負わした、または資産損壊を負わした場合の法的賠償責任をカバー
個人傷害補償
プレー中の事故による怪我に対する一時金補償
ホールイン補償
お祝い金への補償
自動車への損害補償
ゴルフ場のパーキングにて自身の車が何かしらの理由で損害を受けた場合の補償
ゴルフカートへの補償
電動カートなどを使用中に破損させてしまった場合の補償
上記は年間包括で手配するタイプの保険ですので、プレーの都度にアレンジする必要もなく、安心してゲームを楽しむためには一考の価値があるかもしれませんね。
詳しくは専門家のアドバイスを求められることをお勧めします。
サイバー保険について
最近の豪州における個人情報保護法案の改定を受けて、にわかに注目を集めているのがサイバー保険です。
この保険でカバーできるリスクは大きく分けて2つあり、最初がサイバー攻撃によって被る自社の損害となり、例えば自社システムの復旧費用や、罹災によりシステムダウンで事業中断が発生した場合の逸失利益などとなり、次が情報漏洩を理由に第三者から損害賠償を求められた場合などへの補償となります。
以前サイバー保険がまだそれほど普及していなかった頃にはそれぞれのリスクを他の種目の保険で部分的に個別にカバーするのが一般的でしたが、前述の法案改定や事故の頻発化による世間的な注目の上昇などを受け、より広い範囲を包括的にカバーする保険が広まってきたと言えます
しかしながら保険商品によって補償範囲は様々となりますので、実際に検討をする際には専門家のアドバイスを受けられるのが良いでしょう。
機械保険について
工場などの生産設備がある企業の場合、昨今の機械類への依存度は非常に高いものと思われます。火災や地震などで建物と同時に機械類が損害を受けた場合は、通常建物全体に掛かっている火災保険の対象になります。
しかし機械類が偶発的に故障したような場合は通常火災保険の対象とならず、そうしたケースをカバーするためには別途機械保険(Machinery Breakdown Insurance又はEngineering Insurance)が必要になります。
機械保険では機械類の偶発的で突発的な故障の他に、ボイラー、圧力機器などの水蒸気による破裂・爆発も補填します。
保険の掛け方としては、機械類すべてを対象にする方法以外に、特定の機械を限定して保険を掛けることもできます。
ちなみにこの保険では、事故後の機械の修理費用や逸失利益以外に、例えば冷蔵庫や冷凍庫の食材が腐敗した場合の補償を含むこともできますので、倉庫業者やレストラン関係者などもご一考の価値があると思われます。
ご関心の向きは保険取扱い業者にご照会になられるとよいでしょう。
取引信用保険について
今回はオーストラリアでは非常にポピュラーですが、日本ではまだあまり浸透していない取引信用保険(Trade Credit Insurance)のお話をさせていただきます。
2012年9月の時点で2011/12年度の豪州における企業倒産件数が過去最悪を記録したというニュースがありました。豪ドル高や消費の冷え込み等がその原因と言われていますが、社会的、文化的にもオーストラリアでは安易に倒産が起きがちで、売掛金の回収が出来ないというリスクが日本に比べても非常に大きいと言えます。そこで皆さんが安心してご商売をしていく上で有効なのがこの取引信用保険で、オーストラリアを含む欧米の社会では非常に発達しています。
この保険では一般的な損害保険とは違い、災害などによる実際の損害を補填するということではなく、本来でしたら保険の対象とはならないビジネス上の危険に対してより広い意味でのリスク管理が可能にします。
例えば既に取引のある相手の支払いが滞ってきたような場合、保険会社の情報網を使って相手経営状態の情報をいち早く得て、倒産による売掛金の回収不能状態を軽くすべく事前に予防することを可能し、かつ新規開拓の取引先に対してどれくらいの売掛金取引が可能か、保険会社の信用調査を元に判断し、極端には取引自体をしない方がよいという決断を可能にします。
さらに付随的なメリットとして、本保険を導入することにより経営が安定すれば銀行からの融資を受けやすくなりますので、ある程度の規模でご商売をされているような場合にはご一考の価値のある保険ではないかと思います。
取引信用保険は非常に特殊な保険です。ご興味ある向きは専門家のアドバイスを求められることをお勧めいたします。
Tax Auditに対する保険について
常日頃からきちんと手順を踏んで対応をしている場合でも、抜き打ちのTax Auditが入ることになれば、専門家(会計士や税務コンサルタントなど)に助力を請うなど、それに対して突発的に発生する費用は決して小さくはありません。特に中小規模の会社ですと、こういった臨時経費が経営を圧迫するようなことも考えられます。
そこで、こういった場合に備えてオーストラリアでは突発的なTax Auditに対して発生する臨時費用を補償する保険が普及しており、もしもの時に備えておくのが一般的です。
この保険では国税局による監査やそのほか連邦や州政府などによる税に関する監査なども補償対象とすることが出来ますが、当然のことながら、保険加入以前に通知を受けている監査に関連する費用などは対象とならず、その結果のペナルティーや追加課税内容なども補償対象となりません。
保険料は売り上げ規模や設定される補償限度額などによって左右されますが、過去に監査を受けたことがあるか、等の詳細にも影響されます。
なお、最近は役員賠償責任保険(D&O Liability)等とセットで包括的にこの保険手配が可能となるManagement Liability保険の商品も一般的になってきていますので、詳しくは専門家にご相談されることをお勧めします。
コンピューター保険について
昨今、様々な企業においてコンピューター制御された業務は多岐に渡ります。例えば製造工場や物流倉庫などにおいてはシステム管理・運転の殆どにおいてコンピューターは関わっており、もしもの突発事故によりシステムが止まってしまった場合には、業務上甚大な被害を被ることが予想されます。
一般的な財物保険においては、火災や盗難などによるコンピューターへの直接的な損害は補償対象として扱うことが出来ますが、機械的・電気的な特性不具合については除外扱いになっているのが通常です。そのためコンピューターへの依存度が高い業務形態の会社においては別途コンピューター保険の手配をすることが有効だと言えます。
コンピューター保険はコンピューター類の突発的な損害を補償する保険です。
ここで言うところのコンピューターとは、周辺機器や外部メモリーなどの記録媒体、コンピューター専用の空調設備なども含まれます。
損害とは例えば突発的な過電圧によるショートなど、コンピューターそのものへの損害はもとより、損害に伴うデータ復旧にかかる費用や、損害を原因とした事業中断からくる逸失利益なども対象として含めることが出来ます。
近年は自前システムに対するサイバー攻撃による損害や、自前システムからの情報漏えいによる損害賠償責任なども対応するような、より包括的なコンピューター総合保険や、IT Liability保険などで個別リスクに対応する方法が一般的になりつつあります。
労災保険における人件費の定義について
オーストラリアの労災にあたるWorkers Compensationは州ごとに異なる形態で対応がされていますが、NSWでは州政府が管理を行い、認可を受けた保険会社が運営を行っています。そのため保険料についてはどの保険会社を通じて手配をした場合でも基本的には同じ額になりますが、その保険料を算定する上で最も重要な要素のひとつが人件費となります。
今回はその人件費の定義として何を含めるのかと言うお話ですが、定義されている人件費とは、Salaryはもちろんの事、OvertimeやBonus、CommissionやSick Leave Paymentsなどのあらゆる収入をその対象とします。 その他にはRetirement PaymentsやFringe Benefitsについても含まれますが、Directors fees などはその限りではありません。
正式な人件費の定義についてはWorkCover Authority of NSW にて定められていますので必要に応じて確認をするのがよいでしょう。
また人件費とは誰に対しての物までを含める必要があるのかという点については、駐在員も含めて会社と雇用契約を結んで上記のような対価を受け取り働いている被雇用者全てという事になります。
なお労災保険の保険料算定に対しては人件費以外にも、業務内容や過去の事故実績などが大きく影響しますので、正しい内容を保険会社に申告した上で、適切な保険を手配する事が大切です。
詳細については専門家に相談されるのがよいでしょう。
新規着任の方の保険について
人事異動の多いこの季節、新たにご着任された方も多いかと思います。慣れない土地での生活で勝手の違う事も多々あるなか、比較的治安が良いと言われているシドニーでも日本に比べると泥棒、車上荒らしなどの発生率は非常に高く、備えあれば憂いなしという事で、今回は個人生活に密接している一般的な保険をいくつか紹介します。
家財保険
自分の家財を盗難、火災などから守るだけではなく、一般的な家財保険に自動付帯してくる個人賠償責任保険によって、オーナーの建物への損害にも備えることが出来ます。
自動車保険
日本の自賠責にあたるCompulsory Third-Party Insurance、通称Green Slipは対人賠償の保険で車両登録時に強制加入となります。この保険は車自体に掛かっていますので、中古車を購入する場合などは既に前オーナーが掛けていた保険が残っていることもあり得ます。また、日本と違い任意で対人賠償の保険を掛けることはありません。一方、任意の保険では自分の車と対物賠償を補償するComprehensive Coverが最も一般的です。保険会社によっては日本で掛けていた保険料の割引率適用を引き続き受けることも可能ですので、保険手配時にはご確認されることをお勧めいたします。
医療保険
オーストラリアの国民健康保険制度であるメディケアの適用を受けることが出来ない方は、医療費を補償する保険の手配が必要となるでしょう。日本から海外旅行保険を掛けてくることも可能ですが、長期で滞在をする場合には、現地のニーズに即した補償を受けられる、現地手配の保険をアレンジすることが望ましいでしょう。
動産保険
上記家財保険では家の中からの盗難などは補償しますが、外に持ち出すゴルフクラブやビデオカメラなどは別途保険手配をしないと屋外での損害はカバーされません。
オーストラリアの保険はイギリスの流れを受け非常に発達しており、保険会社各社様々な内容や価格の保険商品を取り扱っております。信頼のできる会社にアドバイスを受けてご自身のニーズに即した保険をかけることが大切だと言えます。
Indemnity Period について
オーストラリアにおいては、事業中断に対する逸失利益などを保険対象とすることは一般的であり、広く知られています。実際、火災などによる直接的な資産損害よりも、その火災によって事業が中断してしまった時の営業利益などの損害の方がはるかに高額になる事はよくありますので、この保険をきちんと手配しておく事は大変重要です。
この保険を手配する際に、それでは火災の後にどれくらいの期間があれば罹災前の状態に戻る事が出来るのか、という点が非常に重要な点の一つとなります。
例えば事務所機能しかもっていない場所が罹災した場合は、業務再開までの期間はそれ程長くかからない、もしかしたら事業中断自体発生しないこともあるかも知れませんが、例えば工場などが罹災した場合にはそうはいきません。そう簡単に代替手配を整える事も適わず、事業再開にはかなりの時間がかかる事でしょう。
そうした事業中断保険のカバーにおいて、保険の補償期間を定めているのがIndemnity Periodで、この期間を適正に設定する事が重要です。
ただし、この期間を例えば12ヶ月と設定していた場合でも、保険補償を12ヶ月分継続して受けることが出来ると言うことではありません。この場合は12ヶ月が最長期間であって、罹災をした時からIndemnity Periodで定められいる期間内であっても罹災前の状態に戻る事ができた時点で保険補償対象期間は切られます。
つまり6ヶ月で復帰できるのに、12か月分の保険手配をしてもあまり意味がないばかりか、事によっては余計な保険料を支払っている事にもなります。大切なのは必要に応じて適切な保険を組み立てることですので、適宜専門家のアドバイスを受けるのが宜しいでしょう。
事業中断に対する保険について
現在この原稿を書いている時点でもタイにおける洪水被害はまだ拡大しているようで、被災した日系企業の数も数百に上ると報道されています。世界的に商品や部品の供給網が寸断されるという非常に厳しい状況にもあるようで、今回はそういった状況に対してこちらでの保険を使っての対応についてお話をしたいと思います。
今回のような洪水で部品の仕入元企業や特定商品の売り先が被害を被り、納品の目処が立たなくなる場合や、部品が入ってこなくなり業務中断を余儀なくされた場合の逸失利益については通常保険契約上の特約でSupplier/Customer extensionを付帯することで対応をしています。
この特約は特定(場合によっては不特定)の取引先が罹災した事に起因した自社の損失をカバーします。取引先については基本的には代替の利かない相手を対象とするのが一般的で、海外・国内問わず保険対象とする事ができます。その場合にはどの取引先を補償対象とするのか、各社に対する補償額をいくらに設定するのか、また相手の操業の実態などの情報を元に保険会社と交渉をしてカバーを作っていく事になります。
ただし、例えば日本の取引先の地震災害など発生確率の高い要因による罹災については対応が難しくかつ保険料が高額になりますので注意が必要です。また実質的な中断の時間が例えば48時間以上となってはじめて保険の適用を受けることが出来る等の条件がつくこともよくありますので、事前にきちんと専門家のアドバイスを受けながら効率的な保険手配をすることが望ましいでしょう。
自動車事故と自賠責保険について
NSW州で自動車事故が原因の怪我をした場合の治療費等への保険補償は、強制保険として加入をしている自動車賠償責任保険(CTP、通称Green Slip)での対応となりますが、今回は具体的にCTPでの事故処理についてのお話をします。
CTPの保険処理においては怪我の内容やその状況にもよりますが、2つのステップがあります。
最初のステップのAccident Notification Formの提示によっては過失の有無に関係なく上限$5,000(最長6カ月)までの治療費および収入損失等への支払いを受ける事が出来ます。
Accident Notification Formでの保険金請求をするに当たっては、
(1)事故を引き起こした車の登録番号を確認する
(2)事故の報告を警察に対しておこなう
(3)Accident Notification Formへの必要事項の記入をおこなう
(FormはMotor Accidents AuthorityのWebからダウンロード可能)
(4)事故原因となった車に手配されているCTPの保険会社が分からない場合は
Motor Accidents Authorityに電話確認をする
(5)医師にFormへの必要事項を記入してもらう
(6)事故後28日以内にFormを該当保険会社へ提示することが求められます。
セカンドステップとして、治療費や収入の損失が$5,000を超えた場合や、上記の条件を満たす事が出来なかった(例えば28日以内にFormの提示が出来なかった)場合、事故を引き起こした車を特定できなかった場合などについては、Personal Injury Claim Formの提示をすることによって、必要に応じた治療費、リハビリ費用、くすり代などの補償を受ける事が出来ます。ただ、こちらの場合は有過失ドライバーなどは対象外となります。
なお、こちらのPersonal Injury Claim Formの提示は事故から6ヶ月以内におこなう事が求められます。
更なる詳細については専門家のアドバイスを求められることをお勧めします。
保険に関わる諸税について
オーストラリアで保険を掛ける際、保険料(Premium)以外に諸税の支払いが必要です。こうした諸税は一旦保険料と共に保険会社に支払われますが、その後州政府や連邦政府に納付され、州や連邦の財源となります。本号では、NSW州を中心とする保険に関する諸税を取り上げてみます。
消防税(Fire Service Levy)
一般に各州の消防活動費用の大部分は、保険契約時に支払われる消防税(Fire Service Levy)を中心とする保険業界からの歳入によって賄われており、火災リスクの度合いに応じて異なった税率が適用されます。税率は消防隊の活動コストなどの統計に応じて随時見直されており、ブッシュ・ファイヤーの多発した後などには税率の引き上げの形で調整されることが多くあります。2011年7月現在NSW州においては、事業目的の火災保険に適用されている税率は保険料の40%にもあたり、住宅保険などでも23%となっています。(因みにブッシュ・ファイヤーが頻発するVicの地方部においては更に高く65%もの消防税が適用されています。)
印紙税(Stamp Duty)
印紙税(Stamp Duty)は金融サービスの多くに賦課される税金で、州政府の大きな税収源の一つです。上述の消防税ほど頻繁に変更されることはありませんが、消防税同様に州によって税率が規定されています。現在のNSW州の印紙税率は9%で、自動車保険や火災保険、傷害保険など、ほとんどの保険種目に適用されます。
GST(Goods and Service Tax)
ほとんどの保険種目がGSTの課税対象となっており、ご承知の通り現行の税率は10%で、連邦政府に納付されます。ABN登録をしている企業や団体は、通常GSTの税額控除(Input Tax Credit)が受けられます。
保険契約時には税抜きの保険料のみを意識していて、税込みの金額の請求を受けて驚いた、というケースもよくあるようです。また印紙税や消防税は何の前触れもなく変更されますので、取り扱い保険会社に確認し、ご納得の上で保険を手配されることが大切です。
保険の告知義務について
保険契約とは、保険会社と被保険者の間の信頼関係で成り立っています。したがってその基盤には被保険者よりの関連情報の告知義務があります。具体的には保険法(Insurance Act)にて「誠実に事実を申告すること(utmost good faith)」及び「包み隠さず申告する義務(duty of disclosure)」が定められていて、これは保険申込み時に過去の事故歴や自身のおかれている状況などの必要情報を可能な限り提示するということで、契約の基本条件となっております。
保険会社側は契約者より提示を受けた情報を元に、保険の引受をするかどうか、保険料をいくらにするか、免責額を幾らに設定するかなどの条件を考慮していくわけです。
では、この告知義務に違反があった場合はどうなるのか。
もしも、故意または重大な過失で重要事項が申告されずに保険契約が締結された場合、契約そのものを解除されることもあり得ます。 もしくは契約解除とはいわないまでも事故時に十分な補償を受けられなかったり、更には追加で保険料の請求をされることも可能性として考えられます。
なおこの申告義務は例えば連名での契約の時などには、契約者全てに適用される為、例え自分が知らない事案であっても、ほかの契約者の誰かが知っていてそれを保険会社に申告をしていなかった場合、場合によっては申告義務の違反と取られる可能性もありますので注意が必要です。
従って皆様も保険手配をする際には告知義務について十分理解をした上で慎重に対応する事が求められます。特に保険会社よりの申込み用紙などにある質問事項で不明な点があるようなら、記入前に信頼のおける取引業者に出来るだけ何でも相談してみることが大切です。
IT関連事業に関連する保険について
昨今の高度にコンピューター化した企業活動においては当然ですがかなりの部分がコンピューターシステムや通信技術に依存しています。その為そういったシステム等が正常に動かなくなった場合の事業中断によって被る損害や代替手段に要する費用等は膨大になる事が大いに考えられます。今月はそういったシステム等を提供する仕事をしているIT関連事業に関連する保険についてのお話をしたいと思います。
IT関連事業の保険といっても色々とありますが、特に重要と思われるのは上記のようなシステム不具合がIT関連事業者側の過失等で起こった場合に損害賠償の請求を受けるケースの保険でしょう。そこでそういった場合の為にIT Liability 保険があります。
IT Liability保険は主にシステム開発・管理、パッケージソフトウェア開発、インターネットサービスプロバイダー、情報処理サービスなどを生業とする会社がその対象として想定されていて、その過失や怠慢にてシステム不具合などが生じ、それによって第三者が被った損害を請求されるような場合に対する保険と言えます。
この保険では上記のような過失・怠慢による損害賠償責任補償の他に、知的財産権侵害、名誉毀損などに起因する物も対象として含まれている場合や、適切な遡行期間を設けて保険加入前に納入したシステムなどへの不具合に関しても対応できるようになっていることもあります。
また近年ではITサービス提供会社に対して同保険に加入する事を契約内に盛り込むような場合が多く、「保険に入るかどうか」よりも「補償額は幾らの保険に入るべきか」の検討をする事が一般的な状況になりつつあります。
ただ、法的な罰金や犯罪行為に起因するもの、因果関係がはっきりしないものなどは保険対象として扱うのが難しいのが一般的です。
同保険の検討をされる場合は専門家のアドバイスを求められるのが宜しいでしょう。
地震の保険について(その2)
まず最初に今回の東北関東大震災にて被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。当地におきましても、皆様の事業が少なからず影響をお受けになっていることと存じます。また、日本ご在住のご家族やご親族におかれましては、たいへんなご心労のことと拝察いたします。
本コーナーでは先々月にQLD州の洪水に対する保険、先月に豪州・NZの地震に関する保険と年明けから豪州自然災害に対する保険のお話をさせていただきましたが、今月は、本稿の趣旨とは異なりますが日本における地震保険について大枠の知識としての簡単な説明をします。
一般的に日本における地震保険とは居住用の建物、家財に対する地震、噴火、津波を原因とする損害を補償するものと定義されています。あくまでも火災保険(住宅火災保険)の特約として手配されるもので、単独での取り扱いは行われていません。災害時の損害額が甚大になることが多く、またこの保険自体が被災者の生活の安定を目的とするため、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険する事により成り立っています。
一方企業向けの場合は状況が異なり、保険会社が単独でリスクを負うことになります。豪州の洪水同様に損害保険の一般的な特性上、定期的に発生することが分かっているような事象に対しては保険をかけるのが難しく、そのため企業向けの地震保険は引き受け条件・審査が非常に厳しくなっています。建物の耐震構造・築年数・建材や防火設備の充実度など、立地条件や対象となる建物の周辺の状況や業務内容などをもとに保険の引き受け可否や保険料が査定されます。(保険料についても通常かなり割高になるケースが殆どです。)また地震による事業中断についてもその備え(在庫や仕入先の分散など)がどれほど出来ているかによって保険料も大きく異なります。
特に企業向けの地震保険については取り扱いが複雑となりますので、専門家のアドバイスの基に対応するのが宜しいでしょう。
地震の保険について(その1)
先月お話をした洪水に続いて今月は地震に対する保険についてのお話です。
2011年は年明けからブリスベンの洪水、ケアンズのサイクロン、クライストチャーチの地震と例年に無く大型の自然災害が頻発しております。今回の地震では多数の方が亡くなり日本人の留学生なども被災をしております。皆様の会社や同僚の方々で被災をされている方もいらっしゃるかも知れませんが、復興には大分時間がかかるだろうとのこと、一日でも早く元の生活に戻れるようお祈り申し上げると共に、亡くなられた方には謹んで哀悼の意を表します。
さて今回は2010年9月に続き2月にクライストチャーチで大きな地震が発生しましたが、地震に対する保険についてはオーストラリアとニュージーランドでは若干事情が異なります。
オーストラリアにおいては一般的に地震は起こらないと思われがちですが、1989年にニューキャッスルでマグニチュード5.6の地震が起きて、被害総額40億ドル、死者13人と大きな被害が出ました。最近もビクトリアや西オーストラリアで小規模ながら地震の発生があり、必ずしもリスク無しであるとはいえません。しかしながらそうは言っても日本やニュージーランドのように活火山があるわけではなく、やはり洪水や山火事などに比べれば発生頻度の低い災害ですので、保険上の取り扱いにおいても一般的には通常の財物保険にて自動的に補償対象に含まれています。但し通常は高額な免責金額の設定がされていることが殆どです。また一定の時間以内(例48時間など)に複数回の地震があった場合には一事故として扱われますが、一定外となると免責金の支払いも複数回に及ぶことがありますので注意が必要です。
ニュージーランドでは政府内にEarthquake Commission(EQC)といわれる機関があり、ここで地震保険の提供、管理、運用をしています。EQCでは一定額までの保険を一般の住宅保険に自動付帯する形で一律手配をし、保険料も住宅保険の一部として徴収しています。つまり住宅保険さえ手配していれば被災時にはある程度までの補償は受けることができることになります。同時にEQCでカバーされる額以上については適宜民間保険で対応が可能となっています。ただしこのEQCの対象は住宅建物となり商業建物は対象となっていませんので、ビジネス上の保険についてはテーラーメイドで個別に対応をする必要があります。その場合にはプロのアドバイスに従ってしっかりした保険手配をしたいものです。
洪水の保険について
2011年最初のひとくちメモのご案内をさせていただくにあたり、まず年明け前からの大惨事となっているQueensland州の大雨・洪水災害にて被災した方々に心よりのお見舞い申し上げます。この記事を書いている現在、いまだ全体的な損害の規模は判明しておらず、被害額は$6 billion超とも言われていますが、実損に加えて道路・鉄道等インフラ網の切断による会社の逸失利益などを考慮すると、かなり大きな額の損失が計上されることが予想されます。
すでに各方面でさまざまに言及されていますが、日本の地震保険のようにオーストラリア、特にQueensland州においては、洪水による損害は一般的な補償対象から外されているケースが多く見られます。これは一定の周期で必ず起こり得る洪水などは事故の概念にはまり難いためです。
そういった事情で、もし企業などが洪水に対する補償をつけることが出来る場合でも、追加で高額な保険料を追徴される、限度額を個別に設定される、高めの免責金額の設定をされる、等の厳しい諸条件が付くことが多くあります。
上記のようにオーストラリア、特にQueensland州での洪水保険というのは非常に難しい問題を抱えておりますが、まずは被災をしてしまった場合にはどうすれば良いのか、保険のあるなしにかかわらず、第一は、当然ですが、ご自身・家族・周囲の安全確保です。電気やガスなどの漏れがないか(安全確認なしにむやみにスイッチを入れるのは危険です)、更なる倒木などの危険はないか、蛇などの危険な動物が紛れ込んでいないかの確認も必要に応じて行うことが大事でしょう。
その上でもし保険の適用があるのであれば速やかに保険会社へ連絡を入れ、同時に可能な限り損害状況の確認をします。今回のように災害が大規模な場合、保険会社もすぐには査定人を現場に派遣することが難しいケースもありますので、損害の状況写真などを残しておくことが重要です。
また保険内容によっては、一時的に避難した先のアコモデーション費用、残存物の撤去費用、及び、例え財物の損害が建物等になかった場合でも、業務上においての特定仕入先や売り先が被災したことによる事業中断など、二次的な災害についても保険で対応できる場合もありますので、まずは保険会社・ブローカーなどに連絡をいれて相談をするのが宜しいでしょう。
例え保険契約上で洪水が除外扱いになっている場合でも、まずは先ほどの保険会社・ブローカーなどに一報を入れて、できるだけの対応策について話し合いを持つことをお勧めします。