情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

オーストラリアにおける事業購入時のデューデリジェンスの留意点

概要
「デューデリジェンス(Due Diligence)」とは、購入しようとする事業の重要な側面を調査することである。デューデリジェンスを徹底することで、購入対象やリスクをより理解し、交渉しやすい立場に立つことができる。オーストラリアで事業購入を検討する際のデューデリジェンスにおいて考慮すべき主な要素を述べる。

「デューデリジェンス」とは、購入しようとする事業の重要な側面を調査することである。
デューデリジェンスを徹底することで、購入対象 やリスクをより理解し、交渉しやすい立場に立つことができる。

購入予定の事業についてデューデリジェンスを行う際に考慮すべき主な要素を以下に述べる。

(1)事業構造を把握する
事業の構造を理解することは、事業の構造が正しくないと重大な結果を招く可能性があるため、不可欠である。

第一に、当事者は何を購入するのかを認識する必要がある。大まかに言って、事業を購入するには2つの方法がある。事業の株式を購入するか(株式取得)、事業の資産を購入するか(資産取得)である。何を購入するかによって、事業の取得プロセスや法的責任、また税金にも影響する可能性がある。

(2)関連調査を行う
関連する調査を行うことは、デューデリジェンス・プロセスの重要な部分である。調査には以下の点を考慮することが肝要である。
・事業に対して現在進行中または間近に迫っている訴訟の有無
・事業についてローンなどの未払い債務の有無

一般的に、さまざまな登記簿上の検索の種類には以下のようなものがある。
・ASIC Connect:オーストラリア証券取引委員会(Australian Securities and Investments Commission)の法人登録サイト
・動産担保登録(Personal Property Securities Register:PPSR)
・土地および所有権調査
・訴訟調査
・商号調査
・特許調査および商標調査(IP Australia:IPA)
・ドメイン名検索

(3)財務の健全性
・事業の過去4年間の財務諸表
・事業の資本構成と、可能であれば現在の既得権益(株式、オプション、ワラント)または未払い債務のリスト
・信用報告書
・売上総利益と業界動向の比較

(4)従業員に対する義務
・給与およびその他の受給権利を持つ従業員のリスト
・労使協定、インセンティブ・ボーナス・プラン、スタッフのローテーション、懲戒手続き、職場規則等の雇用条件
・スーパーアニュエーション、病気休暇、年次休暇、長期勤続休暇等、未払いの従業員の権利
・労災保険料、従業員による労災請求の有無

(5)在庫
・在庫に期限切れの在庫が含まれているか?
・在庫は時価で評価されているか?
・サプライヤーから委託を受けている在庫はあるか?
・所有権留保の対象となる在庫はあるか?
・動産担保法(Personal Property Securities Act)の登録の対象となる在庫はあるか?
・廃棄処分報告書はあるか?

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
Liability limited by a scheme approved under Professional Standards Legislation

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