情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

駐在員事務所VS現地法人

概要
現地法人の業績が悪化した際に本社は債権者に支払わず、現地法人を畳む事が出来るのか?

経緯
以前には駐在員事務所が多かった時代も有りました。21世紀に入ると駐在員事務所の数が減りました。理由としては、バブル崩壊後自立出来ない事務所は閉鎖すべきと本社が方針転換をしたのが主たる理由と思料されます。

駐在員事務所のメリット
豪州における現地法人で無い為、法人として税務申告する必要が無く、法人税を支払う必要がありません。但し、GST(消費税)やPayroll Tax(給与支払税)は現地法人同様発生致します。

駐在員事務所のデメリット
外国企業として登記する必要がある為、毎年ASIC(豪州証券投資委員会)に本社の財務表や役員の署名入りの承認書を提出する必要があります。駐在員事務所は法人で無い為、本社が訴訟の対象となります。法人の場合は、債務超過の際に解散する事も可能ですが、駐在員事務所の場合本社自体に責任が発生致します。当然、本社の役員には役員責任が発生致します。

まとめ
駐在員事務所は一見維持費が掛からない様に見えますが、現地法人という防波堤が無い為、本社に多くの責任が発生致します。


某日系企業は豪州の会社を買収いたしました。購入後騙されたと気付き、会社を解散させる事に決めました。購入前に頂いた財務表とは異なり、多くの在庫は有効期限が過ぎており、また、設備も既に償却済でした。財務表を訂正した所、経営を続ける事は困難と判明致しました。現地法人は既に債務超過に入っておりましたが、役員である駐在員には増資する旨の連絡をし、その者の役員責任を逃れる工作を致しました。
その後現地法人は解散し、多くの無担保債権者には一部の支払いをしたのみでした。もし、駐在員事務所とし、買収後本社の一部門とした場合は、上記の様には行きません。債務者は駐在員事務所ではなく、本社になります。

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