情報提供：アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一（国際商業会議所本部仲裁・調停委員）
気候変動に関する政府間パネル（IPCC）専門家
オーストラリアの近年の労使法改正
概要
オーストラリアでは、2024年に労働法（Fair Work Act 2009）が改正され、労使関係に大きな影響を与えています。本レポートでは、改正の主要なポイントとその影響を分析し、企業や経営者がどのように対応すべきかを考察します。
1.繋がらない権利（Right to Disconnect）
勤務時間外における従業員の連絡対応義務を制限する「繋がらない権利」（Right to Disconnect）が新設されました。この権利は、従業員のワークライフバランス向上を目的としており、緊急時や業務上必要な場合を除き、勤務時間外の連絡を拒否できます。企業には、明確な連絡ポリシーを策定することが求められています。
2.カジュアル従業員の定義変更とEmployee Choice制度
カジュアル従業員の定義が見直され、実際の労働関係が考慮されるようになりました。また、「Employee Choice制度」により、12カ月以上勤務したカジュアル従業員は正社員転換を申請できるようになり、雇用の安定性が向上しました。これらの変更はFair Work Legislation Amendment（Casual and Fixed Term Employment）Act 2024によって導入されました。
3.独立請負人（Independent Contractor）の雇用に関する変更
独立請負人として雇用される労働者の権利が強化され、実際の雇用関係を基にした保護が拡大されました。この改正は、偽装請負を防ぎ、独立請負人にも基本的な権利を保証するものです。これに関する変更は、Fair Work Legislation Amendment（Employee Status Clarification）Act 2024に基づいています。
4.ギグワーカーおよび陸上運輸業者の最低基準設定
ギグエコノミーや陸上運輸業界で働く労働者に対し、フェアワーク委員会（Fair Work Commission）が最低賃金や労働時間の制限、保険の提供を義務付ける基準を設定しました。この改正は、Fair Work Legislation Amendment（Secure Jobs, Better Pay）Act 2024によって実施されました。
5.最高罰則の引き上げ
フェアワーク法違反に対する罰則が強化され、企業や個人に対する罰金額が大幅に増加しました。これらの罰則強化は、Fair Work Legislation Amendment（Increased Penalties）Act 2024に基づいています。この改正により、雇用者は法令順守を徹底し、不正な労働慣行を防ぐ必要があります。
6.賃金窃盗の刑事罰化（Criminalisation of Wage Theft）
賃金窃盗（意図的な賃金未払い）に刑事罰が科されるようになりました。企業や経営者がこの行為をした場合、高額な罰金や刑事責任が科されます。この改正は、Criminal Code Amendment（Wage Theft）Act 2024に基づいています。
7.派遣従業員の同一賃金命令（Protected Pay Rates For Labour Hire Employees）
派遣従業員が正社員と同等の賃金を受け取れるよう、フェアワーク委員会が命令を出せる権限を持つようになりました。この改正は、Fair Work Legislation Amendment（Protected Pay Rates For Labour Hire Employees）Act 2024に基づいています。
結論
2024年の労働法改正により、オーストラリアの労働市場は大きな変革期を迎えています。企業はコンプライアンスを徹底し、従業員の権利を尊重した雇用環境を整備する必要があります。
注意事項：
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
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